蜜色オフィス
「ここに名前と部署をお願いします」
窓を開けた警備員さんに言われる通り、宮坂が部署やら名前をノートに書き込む。
それから鍵を受け取って、警備員さんと何か会話をしてから、医務室のドアを開ける。
それを確認した警備員さんが窓を閉めた後、宮坂が私に目配せをした。
「変な勘ぐりされても面倒だから」
そう小声で言った宮坂が、私の背中に手を回す。
片手でドアを押さえながらそんな事をされると、まるでエスコートされてるみたいでドキっとしたけど……。
ムードも何もない薬品棚と、オフィスで使ってるのと同じデスクがときめきを止めた。
「熱はなさそうだけど、一応計る?」
「あ、ううん。本当に大丈夫だから気にしないで。
もう昼休みも終わるし、宮坂は戻った方がいいよ」
「少しなら大丈夫だよ。
実際、午後に間に合うか微妙だったから、部長に遅れるかもしれないとは連絡してあるから。
……眠れそう?」
一番奥にあるベッドに腰掛けた私に、宮坂が聞く。