蜜色オフィス
「あんな、何の信憑性もないただの石を?」
「でも、あれつけてるだけで運勢がよくなるって言ってたし。
あ、運勢がよくなった人の体験談もいくつも雑誌で紹介されてるらしいよ」
「それが本当にそのブレスレットの効果だっていう証拠は?
それ以前に、俺はその体験談が本当かっていうのさえ疑問だけど」
「それは……っ、そうかもしれないけど……。
でも、そこはこっちの受け取り方っていうか、そういう支えになるモノが必要な時もあるでしょ?」
「だとしても、あんなモノに1万は高すぎる。
早川だって、冷静に考えたら絶対にそう思うだろ。
今は気持ちが昂ってるだけで」
否定しきれなくて、思わず黙る。
昔からこういう系のモノを買おうとするたびに、誰かに止められてた。
家族だとか、友達だとか。
会社に入ってからは、梢にも止められた記憶がある。
で、決まって『騙されやすいにもほどがある』って言われてきたけど……。
考えてみれば、さっきのもまったく同じパターンだ。