蜜色オフィス
「……シーマ」
「よく知ってるね」
「……うん。エンブレム見たから」
宮坂が遠隔操作でロックを解除した車は、白いシーマ。
車に詳しくない私は何気なくその車に乗ろうとして……、エンブレムの隣に書かれたローマ字に一度固まってから助手席に乗り込んだ。
シーマ……確か、結構な高級車じゃなかった?
だって、乗っててもやけに振動が少ない気がするし……、言われてみれば、かもしれないけど。
でも、なんか……。
記憶を辿っても、元から車に関する知識なんて持ち合わせていないから、素直に聞いてみる。
「あの、シーマって……、その、高いよね?」
「新車だと安くても600万とかするらしいけどね。これは中古だから」
「ろっぴゃくまん……」
血が引けそうになる頭をなんとか留まらせて、なんとなく背筋を伸ばす。
こんな車に粗相でもあったら大変なんてもんじゃない。