蜜色オフィス


「確かにね。
らしくないけど、浮かれてるんだろ。早川と付き合ってる事に」


びっくりして見上げると、優しく目を細めた宮坂が私を見ていた。


「ずっと早川の事は好きだったけど……。
手に入れたら、今までとは比べられないくらい大事になった」
「宮坂……」
「まさか自分が女でダメになるタイプだとは思わなかった。
仕事には支障が出ないようにしないと嫌われるかもしれないって、毎日必死だよ」


冗談みたいに笑う宮坂を見て、涙が浮かぶ。
それがバレないように、俯いて笑った。


「……ホント、意外」


それから、目を伏せたまま呟くみたいにもらす。


「……嫌いになんて、なるわけないじゃん」


宮坂には聞こえたかどうか分からなかったけど……。
もう一度口を開いたら涙声になっちゃう事が分かってたから、黙ってた。



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