蜜色オフィス


『芽衣が言うように、アイツが仕事を必死にやってるなら……。
恋愛沙汰で社内の評判が落ちるなんて、不本意だろうな』

別に、宮坂が私の事を適当に考えてるだとか、そんな風には思ってない。
だけど、宮坂の気持ちは信じてるけど、心のどこかで仕事の方が大事なんだろうなって、思ってたから。


初めて宮坂の部屋に泊まっちゃった時、帰りの車でした会話。

『なんで、山口さんを遠ざけてくれたの?』

取引先の人に言い寄られて困ってた私に、宮坂が返した言葉を覚えてる。

『俺が開拓してる最中の取引先だし。
もしも恋愛沙汰なんかで関係が悪化したら困るのは俺だから』

“恋愛沙汰なんかで”って、そう言ってたのを覚えてる。


付き合ってからは、すごく大事にされてるのは分かってた。
でも、それまでの宮坂のイメージが私の中には残ってて。

私の事を想うのとは違う次元で、仕事が大事なんだろうなって……、そう思い込んでた。



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