蜜色オフィス


あの時は、しつこいなって思ったけど……。
イヤがらせにさえ思えて、頭にきたけど。

裏を返せば、本当に心配してくれてた証拠なのかもしれない。

いつだって宮坂は、憎まれ口の中に優しさを隠してた。
私がそれに気付けなかっただけで。


「あんな、ポーカーフェイスなのに」


梢より心配症だなんて、想像もつかない外見なのに。
あまりにドライすぎるから、コンタクトができなくてメガネなんじゃないかとか、そんなバカな事を本気で思ってたのに。

おかしくなって、ふって笑いがもれる。

―――けど。
次の瞬間には、それは消えていた。

代わりに滲み出した涙が、溢れ出して枕に吸い込まれる。



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