蜜色オフィス
誤魔化せばよかったのかもしれない。
なんでもないって笑えばよかったのかもしれない。
でも……。
全部を見透かすみたいな宮坂の瞳の前で嘘をつくなんて、私にはできそうもなかった。
じっと私の言葉を待っている宮坂に、戸惑いながら声をかける。
「……なに?」
「いや。早川が俺に言いたい事があるんじゃないかと思って」
「言いたい事……?」
完全に沖田さんとの事がバレてるとは限らない。
だから、曖昧な返事しかできずにいると、それに痺れを切らしたのか、宮坂が言う。
「沖田に、俺と別れるように脅されてるって」
「知って、たの……っ?」
宮坂は、ため息をついた後、私の肩に手を回した。
そして、ベッドに座るように促してから、自分はキッチンに戻って、買ってきたスポーツドリンクを私に差し出した。