蜜色オフィス
「沖田の事も母親が育てたいって言うから、社長は多額な慰謝料と養育費を支払ったって。
子どもの事も、早く跡継ぎをって周りが口をそろえてたって言うし……、かなり窮屈な生活だったんだろうな。
まぁ、夫婦の事だし、第三者には分からない事だから何も言えないけど」
「……うん。そうだね」
「別れた後しばらくして、社長が惹かれたのが俺の母親だ」
「えっ、」
「よく政略結婚ができたなって疑問に思うくらいの熱心さだったって母親が言ってた。そんな社長に母親も惹かれていって……、俺が生まれた」
「そうなんだ……。あれ、でも名字が……、社長って須藤だよね。沖田さんが違うのは分かるけど、なんで宮坂も違うの……?」
「その辺が、政略結婚なんてさせる世界の難しいところなんだろ。
母親はごく一般的な家庭に育ったから。
そんな相手を、社長の両親が許すハズがなかったんだ」
宮坂が少し悲しそうに微笑む。
「まぁでも、籍は入れられなくても事実婚みたいなものだけど。
社長は母さんのマンションに毎日帰ってくるし、自分の部屋より母さんの部屋にいる時間の方が断然長いくらいだし。
そんな生活を、もう27年続けてる」