蜜色オフィス
「……って、あ! だから、あんなに高そうなマンションに住んでるの?!
ベッドももらったって言ってたけど、社長に? 車も?」
ずっと気になってたんだ。なんだかベッドも車も宮坂らしくなかったから。
その答えが見つかったように思えて少し早口に聞くと、宮坂は「そう」って頷いた。
「部屋は、もともと社長が使ってた部屋なんだ。
俺が家を出る話をしたら、たまにしか使っていなかったから使えって、すぐに鍵を渡してきて。
あのベッドは使っていいって言うから、そのまま使わせてもらってるだけ。車もそんな感じで」
「そうなんだ。なんか高価なモノ使ってるのって宮坂らしくないなって思ってたんだけど……。そっか、だからなんだ」
「自分で何でも買える年だし、必要ないって言ったんだけどね」
宮坂が隣でため息をつく。
でもその表情は、柔らかかった。
「何かしたくて仕方ないみたいで。いい年して子離れできないでいるから、俺が困る」
「いいじゃん。宮坂はきちんとした価値観持ってるし、仕事だってばっちりだし。少しくらい甘えてもいいと思う」