蜜色オフィス


なんだか微笑ましい親子に思えて、笑顔で言う。
宮坂も微笑んだけど……、それを苦笑いに変えた。


「社長に……、っていうより、社長の息子って立場に、大いに甘えた結果が沖田だよ」
「沖田さん……。第一営業課にいるし、言ってる意味はなんとなく分かるけど。
っていうか、沖田さん、社長のコネで入社したの? 宮坂は入社試験受けてたよね、確か」
「ああ。早川とは順番が近かったのを俺も覚えてる」
「だよね。面接の時、宮坂全然緊張してないみたいにすらすら答えたから、印象的だったんだ」
「俺も、早川がすごく緊張してるのが見て分かったから印象的だった」
「……思い出させないでよ。本当にすっごい緊張してたんだから」


宮坂がふって笑ってから、もう一つの私の質問に答える。


「俺は、実力で入りたかったから、社長には言わずに入社試験を受けたんだ。
他の会社も考えたけど、どうせ働くなら社長の手助けができればと思って。
元々、社内では社長も俺との関係を公にするつもりはないみたいだったし、それなら一社員として評価してもらえるだろうしね。
沖田は、コネを使ったらしいけど」
「やっぱり……。だから第一営業課にいるんだって、本人も言ってた。
でも……、宮坂との関係は秘密のままで、そのうち沖田さんとの関係だけを公にするって事は、社長は、本当に沖田さんに跡を継がせるつもりなのかな。
なんか、納得できない」



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