蜜色オフィス
「山口さんが早川に興味を持ってることは前から気付いてた。
だから、電話も俺が間に入って繋がないようにしてたんだ。
まさか、早川が山口さんの気持ちに気付いてるとは思わなかったけど。鈍感そうだから、その辺」
「え……、だから、最近電話こなくなってたの?」
混じりこんでる嫌味は無視して聞く。
宮坂はハンドルに手を置いたまま、信号を見つめて首を傾げる。
「本当にそれが原因だかは分からないけど」
「……宮坂は、なんで?」
「なにが?」
「なんで、山口さんを遠ざけてくれたの?」
宮坂は信号機の赤い色を見つめて、それから、私に一瞬だけ視線を移した。
「俺が開拓してる最中の取引先だし。
もしも恋愛沙汰なんかで関係が悪化したら困るのは俺だから」
「……」
……そりゃそうだ。
こういう奴だよ、宮坂は。
感情論なんて頭の隅っこに追いやって、体裁とか損得勘定のみが頭を支配しているような奴だよね。