蜜色オフィス


「ここに、名前と部署を書いてください」


警備員のおじさんに渡されたのは、「医務室使用者」って名前のつけられたノート。

パラパラめくっていくと、確かに福田くんの名前が並んでて、思わず苦笑いがもれる。
そのままページをめくって、ノートの半分くらいのところで白紙に辿り着いた。

一番最後に書かれているのは、「宮坂千明 第二営業課」。
宮坂の文字だった。
私が休みにきた時のだ。

男にしてはキレイな文字を眺めながら、その下に書こうとして指が止まる。
数行上に、もうひとつ宮坂の名前を見つけたから。

私が見てた限り、宮坂が体調不良で医務室に行った事はなかったと思うけど、でも確かに書いてある。
日付は、約三ヶ月前。

薬でももらいにきたのかな……。後で聞いてみよう。

そんな風に思いながら、名前と部署を書き終えて声をかけようと顔を上げと、すぐに警備員のおじさんと目が合った。
っていうよりも、私が見る前から見られてたみたいだった。

……しかも、かなりじっくり。


< 255 / 302 >

この作品をシェア

pagetop