蜜色オフィス
「え……、嘘、でも、私をここに運んだのは違う人だったんじゃ……」
「いや、彼だよ。
黒髪でスラっとした体型の。無表情でちょっととっつきづらい感じで」
「黒髪で無表情……」
間違いなく、沖田さんじゃない。
「キミの事、大丈夫か聞いた時は少しだけ笑ってたけど。
ああ、眼鏡かけてたな」
間違いなく……、宮坂だ。
「私、宮坂に……、その、眼鏡の人に運ばれてきたんですか?」
「そうだよ。キミを運んで10分くらいした後、鍵を返して戻って行ったけど」
「でも……、目が覚めた時、医務室には他にも人がいて……。
その人の名前、ここにはないんですけど……」
運んでくれたのが宮坂だとして。
でも、沖田さんが医務室にいたのは事実だ。
それなのにノートに名前がないのはおかしい。
そう思って聞くと、おじさんは言いづらそうに苦笑いした。