蜜色オフィス


「ああ、でも、その人が入って行ったのは、キミが部屋から出てくるすぐ前だから。
寝てる間に何か、とか、そんな心配はしなくて大丈夫だよ」


ノートを見つめたまま考え事をしていた私を勘違いしたのか、おじさんが言う。


「あ、はい。ありがとうございます」


気を使ってくれたおじさんに笑顔を返して、鍵を受け取ってから医務室に入って……、ある事を思い出した。

倒れてここに運ばれた時。

少し眠りが浅くなって、誰かが頭を撫でてくれてた事に気づいた。
そして『ゆっくり休んで』って、優しく言いながら、おでこにキスして……。

私はその人の事が、気になってんだ。

頭に触れられただけで、すごく満たされた気持ちになって、好きな人が傍にいてくれているみたいな安心感とドキドキを感じたから。

運命、なんて言ったらおおげさだけど、直感で気になった。
だから、その直感を信じて、知りもしない沖田さんの告白に頷いた。




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