蜜色オフィス


普通だったら断わってたけど、優しい手とキスが、気になってたから。
でも、あれは……。


「沖田さんじゃなかったんだ……」


頭を撫でられて、私はその手に誘われるみたいに、もう一度深い眠りについた。

沖田さんがいたのは、私が次に目が覚めた時の事。
どれくらい寝ていたのかは分からないけど、私が出て行く少し前に入ってきた沖田さんには、不可能だ。


「宮坂だったんだ」


運んでくれたのも、頭を撫でてくれたのも、キスも。優しい言葉も。

全部、全部……。
宮坂がしてくれた事だったんだ。


満たされた気持ちをくれたのは。
運命、なんて言葉を思い浮かべちゃうくらいの直感を感じたのは。

“私は、この人を好きになる”

そう思った相手は……、全部、全部。宮坂だったんだ。





< 261 / 302 >

この作品をシェア

pagetop