蜜色オフィス


社長室で社長と向かい合って座るなんて、一般の社員だったらみんな緊張でカタコトになると思う。
失敗しないように短い返事をして、宮坂の後に続く。

私が緊張してるからか、宮坂は私をチラって見て笑ってた。
なんとか転ばずにソファーに座ったところで、「早川さん」って呼ばれた。


「は、はい」


顔を上げると、社長は私を見ていて、緊張がピークになる。
だけど……、やっぱりどことなく宮坂と似ているからか、社長の顔を見ていたら、だんだんと緊張は解けていった。
もちろん、全部が解けたわけじゃないけど。


「拓海の事、随分悩ませたみたいで悪かったね」


拓海って言われてもピンとこなかった。

けど、宮坂が『例の件だろ』って言ってたのを思い出して、"拓海"が誰なのかようやく気づく。




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