蜜色オフィス


「あ……、沖田さんの事、ですか?」
「ああ。すべて宮坂……、いや、千明から聞いたよ。
千明への嫌がらせのために早川さんの気持ちをもてあそんで、キズつけたって。その後も、早川さんの千明への気持ちを利用して、関係を迫ったり脅したり……、本当に申し訳ない。
親として情けなく思う」


社長が頭を下げるから、咄嗟に「いえ」って言葉が飛び出す。

けど……、社長に謝られても解決するわけじゃないから、今思ってる不安を、なるべく失礼にならない言葉を選んで話してみる事にした。

一社員が社長に私事を話すなんてあまりない事だけど……。
社長が作ってくれる雰囲気が柔らかいせいか、さっきまでの緊張はだいぶ解けていた。


「でも……、いくら宮坂さんが課長になったからって、沖田さんの事が解決したとは思えません。
今回の移動で、宮坂さんは沖田さんよりも立場上、上司になりましたけど……。
私が見る限り、沖田さんの宮坂さんへの執着はとても強いものでした。
沖田さんなら、例え今回の移動の件があっても、きっと宮坂さんの立場を悪くするような事を会社で吹聴する……、」
「その事だけど、拓海は早川さんにどんな事を言って脅したのか、聞かせてもらいたいんだ」



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