蜜色オフィス

「もちろん、今までおまえの好きにさせてきた私にも責任がある。
だからこそ、私の会社でおまえを仕事のできる人間に叩き直してやる」
「責任……？　一度俺を捨てたやつが言う言葉じゃないだろ」


吐き捨てるみたいな笑い方をする沖田さんに、社長は少し間を空けてから言葉を返す。


「確かにそうかもしれない。でも、後悔しているからこそ、もう二度と同じ過ちは繰り返したくないんだ。
私の自己満足だととってくれて構わない。
一度受け入れた以上、今度こそとことん面倒を見させてもらう」
「ふざけんな！」
「それに、いつまでも私が面倒を見てやれるわけじゃないんだ。
いずれは、できるならおまえと千明にこの会社を託したいと思っている」
「だから、会社継ぐのはそいつでいいだろ。
俺は関係ない」
「それに、公表しないのは、おまえのためでもあるんだからな」


沖田さんとの関係を公表しないのが、沖田さんのため？
どう考えても、公表された時、沖田さんにはメリットしかないように感じるけど……。
沖田さんにとってのデメリットってなんなんだろう。

宮坂も分からないのか、社長の言葉を待つようにじっと見ていた。