蜜色オフィス


高い家賃のせいで食堂のメニューすら頼めないのかと推理した私に、宮坂は合わせていた目を逸らす。
いつもじっと見つめてくるくせに、自分の話題になると目を逸らす。

これは、宮坂を意識し始めてから見つけたクセ。


「そんなもんかな」
「……」


またはぐらかすし。
自分の部屋の家賃なんだからはっきり金額が分かってるくせに。

……まぁ、そんな事聞く私も私だけど。

私だったら、5万2千円って千円単位で答えた上に、部屋の気に入らない所から気に入ってる所まで話し出すところなのに。


「で、何の悩み?」


忘れていた話題を引っ張り出した宮坂に、一瞬目をぱちくりさせたけど……、すぐに思い出した悩みの種に顔をしかめた。

忘れたくて普段は飲まないお酒を飲んでも、12時間睡眠に挑戦してみても、結局忘れられない種。
私の中深くへと根を伸ばした種は……、根付いてしまった以上、簡単には引っこ抜けない。




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