蜜色オフィス


「……宮坂は興味ない事だもん」


机に顎を置きながらぼそっと答える。
省エネモードになったパソコンの液晶画面が、真っ黒な画面に私の不貞腐れた顔を映していた。


「あるよ」
「え、」
「早川の悩み事が、環境問題とか世界情勢だとかに関係する事なら」
「……関係ないの分かって言ってるんでしょ。
本当意地悪だよね。
私はこれでもこの事を一ヶ月も悶々と悩んでるのに……」


私が机に突っ伏しながら言っている中、宮坂は一人涼しそうに手元の本に視線を落とす。

タイトルは「経済理論」。
私が読んでも涼しい気分になりそうだけど。


「一ヶ月? じゃあ、先週の飲みすぎはそれが原因?」


すっかり忘れてると思ってた事を持ち出されて、少し驚きながら頷く。

他人に興味の欠片もなさそうな宮坂は、要らない情報だとか事実はどんどん消去していくのかと思ってたから、覚えてくれてたのは正直意外だ。



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