蜜色オフィス


「まぁ、うん。そう。お酒飲んだところで、結局何も解決しない事が分かっただけだったけど」
「アルコールで解決できる悩み事なんて、ないに等しい気もするけどね」
「なんでいちいちつっかかるかなー……。
これでもね、落ち込んでるの。最悪な状況なの。ご飯も喉を通らないほどに悩みまくってるの」
「だから最近顔色悪いんだ。
で、なに? その悩み事。そこまで言われるといい加減気になるし、この話題をこれ以上引っ張られるのも嫌なんだけど」


本をパタンと閉じてこっちを見てくる宮坂の視線が痛い。
机の上で組んだ両手につっぷしていた顔を上げて、目を伏せてゆっくりと答える。

極力、宮坂の方は見ないようにして。


「1ヶ月前にね、試してダメならそれでいいからって押し切られて、付き合いだした人がいるんだけど……。
その人、他の子にも声かけてるみたいで」
「……」
「でも、別に本当にお試し期間みたいなものだし、付き合ってるわけじゃないから、浮気とも言わないんだけど……。
それでなんか、もやもやしてて……」


私がぼそぼそと言った言葉に、宮坂は眉を潜めてすぐに言葉を返す。




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