蜜色オフィス


微笑まれて……、ドキってしたせいで一瞬言葉がでなかった。

宮坂って、一見クールそうだしポーカーフェイスなのに、すごく柔らかく笑うから。
そんな顔を見せられるたび、ドキってして……、嬉しくなる。


「……別に。私だってもういい大人だし」
「大人なのにすぐ騙されるし素直すぎるから、見ててこっちがハラハラする」
「私、そんなに騙されたりしてない……、」
「Y商社の山口さん、本当は結婚してるって知らなかっただろ」
「えっ」
「Y商社の社員に聞いてみたら、そう言ってた。
確かに、薬指に指輪もしてたし、飲み会の時も、二次会に行く前には必ずどこかに電話入れてたから、そんな気はしてたけど」
「で、でも、私には独身って言ってたよ。
っていうか、しつこく言い寄ってきたりしてたのに……」
「早川なら騙せるって踏んだんだろ。
山口さんをよく知ってる人は、女癖悪いって口をそろえて言ってたし」


そんな……。
あんな、こっちが迷惑するくらいにガンガンアピールしてきてたのに。

浮気相手として選ばれてたなんて最悪だ……。
っていうか、山口さん最低……。


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