蜜色オフィス


「あと早川が騙されてる事で思いつくのは、毎週水曜日に、同期の篠田が早川に仕事頼む機会が多い理由とか」
「それは、歯医者に行くからでしょ。
篠田さん、親知らず抜いたりしてて大変だって言ってたし」
「表向きはね。篠田が定時で帰る日は、必ず課長も残業しない。
篠田と課長は上手くやってるつもりだろうけど、第二営業課にはほとんど気付かれてるよ。
……早川は知らなかっただろうけど」
「え……っ」


それって、篠田さんと課長がそういう関係って事……?
課長は独身だし、篠田さんと付き合っててもおかしくはないけど……。


「それ、本当に私以外は気付いてるの?」
「信じられないなら西岡に聞いてみれば。
それ以前に、あれだけそわそわして課長を気にしながら歯医者に行くって言う篠田を信じる方が難しいと思うけどね」
「……」
「他にも例をあげれば、その手の話はいくつもあるよ」


「聞きたい?」って聞く宮坂に、ふるふると首を振る。

例をあげられればあげられるほど、自分の鈍感さだとか騙されやすさを指摘されてるみたいでイヤだったから。

課長と篠田さんの事、梢が気付くんだったら分かる。
恋愛関係には異常なくらいに鋭いから。

でも、こんな恋愛のれの字も興味ないような宮坂が気付くくらいなんだから……、それに気付けない私って、本気でまずい気がしてきた。



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