蜜色オフィス


なんとなく、怒れずに聞く。

宮坂が本当のところ手を出したかどうかは知らない。
けど、……少しだけ。
少しだけ、私が宮坂にフラって揺れてるのは確かで。

でもそれって、流されやすいからなのかな。
今までみたいに流されてるだけ?

少し、違うような気もするんだけど……。

「フラフラ行って欲しかったの?」って私の問いに、梢が「うーん」って唸った後、大きく頷く。
悩む意味なんかなかったんじゃないかってくらい、大きく。


「行って欲しかったね。だって、沖田なんかよりも絶対いいじゃん」
「沖田なんかって……」
「っていうかさー、もう振ればいいじゃん! 試したけど最悪でしたって言ってやりなよ。
大体沖田って、前から女関係怪しいって噂が……、」
「―――あれ。今俺の話してた?」


振り向くと、給湯室のドアのところに、沖田さんがいて。
なんとなく目を逸らして首を振る。


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