蜜色オフィス


「あ、いえ……」


仮にも付き合ってるハズなのに。
なんでこんなに遠い人に感じるんだろ。

女子社員にすごく人気があるくらいにカッコいいのに。
なんでドキドキしないんだろ。

沖田さんにドキドキするのは、キスされそうになったりホテルに誘われたり、そういう時だけの気がする。
それも、恋のドキドキっていうよりも、焦ってって方がきっと正しい。

宮坂には、なんでだかやけにときめいちゃったりしてるのに。
……私、おかしいのかな。


「沖田さん、朝一の会議終わったんですか?」
「ああ。さっきね。
これからサブが会議するところ。
ちょっとコーヒーでも飲もうかと思って」


“サブ”っていうのは、第一営業課が第二営業課につけたあだ名。
言葉通り、“補欠”みたいな意味合いで、バカにして呼んでるのは知ってる。
そんな風な悪ふざけをしてるのは、第一営業課の中でも一部だけだけど。

その“サブ”に所属してる私とか梢の前でまでそう呼ぶのはどうかと思う。
デリカシーがなさすぎる。


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