蜜色オフィス
私にアイコンタクトを送った梢が、給湯室から出て行く。
梢に「コーヒーありがとう」って微笑んだ後、沖田さんが私を見た。
「変な噂が流れてるみたいだけど、嘘だから。
芽衣は何も心配する必要ないよ」
「……はい」
「心配した?」
「あ、いえ」
「なんだ。焦った芽衣が今日こそ俺と一晩過ごしてくれるかと思って期待してたのに」
こういう事を言われても、どんな顔をすればいいのか分からなくて困る。
私だってもう23だし、それなりに経験だってある。
人数は少ないけど、えっちだって。
だから、恥ずかしいから、とか、そんな事を理由にして嫌がってるわけじゃない。
「沖田さん、最近話すとそればっかりですよね……」
付き合い始めて数日経った頃から、こんな話ばっかりだ。
豹変ってほどじゃないけど、ただ優しかった沖田さんが、身体の関係ばかりを求めるようになった。