蜜色オフィス
謙遜してるわけじゃないけど、私は、外見だって性格だって家柄だって。
全部が、いたって普通だ。
社内には、私よりもキレイな人がたくさんいるし、沖田さんが誘えばホテルについてくる子もいると思うのに……。
なんで、私なんだろう。
ずっと疑問に感じていた事を考え込んでると、急に影が落ちた。
顔をあげると沖田さんが目の前にいて、とっさに一歩下がる。
「今夜、予定ある?」
「え……、」
壁を背中にして逃げ場のない私に、沖田さんがニコニコしながら近づく。
そして30センチくらいまで距離を縮めて、言う。
「だから今夜。
……いい加減相手してくれないと、噂が本当になっちゃうかもしれないよ?」
「……離れて、ください」
「ねぇ、芽衣。今夜―――……」
キスされそうになって、顎をぐっと引いた時だった。
「早川」って、名前を呼ばれたのは。