蜜色オフィス


「例えば、入社式まで時間がさかのぼれるとして。
それができるなら、俺はおまえの教育係なんかには絶対にならない」
「お、宮坂先輩、時間をさかのぼるなんてロマンチストですね」


夕方のオフィス。
パソコンで資料を作る私の横には、席に座ってる宮坂と、その前に立たされる福田くん。

どうやら午後一で必要になる資料作りをすっかり忘れていたらしく。
おかげで宮坂は、社長出席の会議で、カンペなしで報告する事を余儀なくされた。

それでも宮坂が乗り切ってくれたからなんとかなってるけど。

社長出席の会議で資料ミスだなんて、普通だったら考えられない。


「本来であれば、頼まれた仕事以上の事をできるように育てるのが教育係の仕事だ。
だけど、おまえに関しては、頼まれた仕事だけでもきちんとこなせるように意識して仕事させてるのに……。
いい加減、俺もお手上げだ」
「あーあ。お手上げだって。
でも宮坂、今までよく我慢してたよね」


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