蜜色オフィス


左斜め前にいる梢が、笑いながら言う。
営業の人も何人か帰ってきているオフィスには、15人くらいの人がいるけど。

みんなが宮坂に同情の眼差しを、そして福田くんに呆れた顔を向けていた。
福田くんだけ完全アウェー。


「あ、宮坂先輩がお手上げなら、俺、芽衣先輩に教育してもらう……、」
「福田。自分で教育係が指名できると思っているのか?
キャバクラだとかそういう類の店と職場を一緒にするな」
「えー、だって、」
「俺だって指名制だったらおまえをすぐに拒否してたよ。
……その前に、“芽衣”じゃなくて“早川先輩”だろ」


はー、ってため息をつきながら宮坂が言った言葉。
その中に“芽衣”なんて言葉が入り込んでいたのに気付いて、心臓が跳ねる。

宮坂はいつも“早川”って呼ぶから、なんかびっくりっていうか、ドキっとして。


「でも、芽衣って可愛い響きで芽衣先輩にぴったりだし、これを呼ばない手はないですって」
「福田。そこまで反省しないなら、連れて行ってやろうか」
「え、どこにですか?」
「第二会議室」



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