蜜色オフィス
「っていうか、なんでそんな詳しいの? 沖田さんの事」
沖田さんは、私とか宮坂よりもひとつ先輩だ。
なのに呼び捨てだし……。
もしかして、会社以外でもつながりがあるのかな。
そんな風に思って見ていた時、宮坂がピタっと止まった。
そして、私を見る。
「来た」
「えっ、」
「今、入口。静かにしてろ」
言われて、口に手をあてる。
それからそーっと入口のあたりを見た。
自動ドアから入ってきたのは、確かに、沖田さんだった。
その隣を歩くのは……、見た事のない女の人。
沖田さんを待ってる間、このホテルの簡単なパンフレットに目を通した。
だから、おいしいディナーを出してくれるようなレストランが入ってない事も、最上階だとか地下がバーになっていない事も分かってる。
書いてあったおすすめは、ムードの漂う部屋と、ルームサービス。
ここに入ってきた時点で宿泊目的なのは、明確だった。