蜜色オフィス


「あ、ごめん」

メイク道具の入ったポーチとか、お財布とか。
宮坂の足元に落ちちゃったモノを、宮坂が拾ってくれる。

私もカバンとか手帳を拾い上げて顔を上げた時、至近距離にいる宮坂と目が合って、ドキっとする。

宮坂は離れるでもなく……、そのまま私を見つめてた。


「さっきの話だけど」
「え、なに……?」


畳の上についていた右手に、宮坂の手が重なる。
一瞬びくって身体が反応しちゃったけど、そのまま宮坂を見つめ返して聞く。

近すぎて、ドキドキする。


「俺のために泣くとか、そういう事はやめろ」
「なんで……?」
「自分のためを思ってあんな風に泣かれたら、グラつかない男はいないから。
―――あと」


そう言った宮坂が、ぐっと距離を縮める。
そして、唇が触れる直前、言った。


「俺が男だっていう事も、忘れるな」



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