隣の席のキミ
「…じゃねぇよ!!」
安心していた私に誰かがそうツッコンできた。
振り返るとそこには額にしわを寄せた藤田がいた。
ってことは、私、遅刻…?
恐る恐る藤田と目を合わせると「10分遅刻!!」と言い張った。
あれ…やっぱり…?
まぁ10分くらいどうってことないよね。
「まあまあ、そんなに怒んないでよ~。でも遅れてごめんね」
そういい流すと藤田はそっぽを向いた。
な、なんでそんなに怒ってるの…?
いつもの藤田だったら「しゃぁねーなぁ。許してやるよ~」とか言うのに。
私、もっとちゃんと謝るべきだったのかな…。
確かに、待っていた方はいくら10分でも長く感じるよね。
「あの、ごめんなさい…」
私はもう一度、今度は真剣に謝った。
駅前を通る人々がこちらをじろじろと注目しながら歩いて行く。
恥ずかしいしけど、私が悪いんだから仕方ない…!!
そう心に言い聞かせて、なんとかその状況を冷静に保つ。
しばらくして、藤田はこちらを振り向いた。
「じゃあ、俺の事、名前で呼んでくれたら許す!!」
さっきの藤田はどこへ行ってしまったのか…。
意地悪な顔してニコッとする藤田に私はまんまとはめられたみたい。
はぁ…。