隣の席のキミ
「なに…?」
その方向に顔を向けると、目に映ったのは見るのが今日で三度目になる景色だった。
祐斗と一緒にいると楽しくて、あっという間に時間は過ぎていたんだ。
景色はもう、夕焼け。
君に告白できなかった時―――――。
彼女がいる君を忘れようとして、儚いキスをした時―――――。
そして、やっとの想いで気持ちが繋がった君とデートをした今―――――。
どれもこれもが、今の私にはいい思い出で。
その思い出の中には必ずあの綺麗に染められた夕焼けがあった。
まるで私達の恋を結びつけてくれたみたいに。
隣を見ると、君がいて。君の隣には私がいる。
遠い夕焼けを眺める君の横顔は、オレンジ色のライトに照らされて…。
私はなぜだか泣きたい気持ちになった。
「由花、なんか泣きそう」
そう言って私の髪をなでた祐斗。
もしも今が、過去の今だったとしたら、君は多分こう言った。
『山城さん、泣きそう』
って。
祐斗の優しい声で呼ばれた私の名前。
“さん”付けでもなく、名字呼びでもなく、名前。
「だって…祐斗との思い出おもいだしちゃって…」