隣の席のキミ



――――――君は、もう、行ってしまった。
遠い場所、私が知らない場所へ。
私は、どうしていいのか、分からなかった。
ただ、呆然と立ち尽くす…。
悲しい、
寂しい、
苦しい、
それなのに出てこない涙。
それが余計に、胸を締め付ける。

「……由花!!」
耳をすませば、親友の声。
勇気をくれた、親友の声。
「……ま…まなぁ」
体の力がスゥーって抜けて、走って来た真菜に抱きついた。
その瞬間に、溢れる涙。
「……まなぁ、あたし…っ、藤田に…っっ…」
悲しすぎる気持ちが邪魔して、なかなか声が出ない。
涙、しょっぱい…。
悲しい味…。

「……頑張ったじゃん!!……遠くから…見てたよ…?」
私の髪を撫でてくれる優しい手。
手…といえば、藤田を思い出す。
あの、大きくて骨っぽかった男の人の手…。
また、涙が溢れ出す。
「…真菜っ…見てたの~っ??」
「うん、バッチリ」
「恥ずかしい~っフラれたのにぃ…っ」
「いっとくけど、由花は、まだフラれても結ばれてもない…それ以前に告ってないこと自覚してる~??」

え……??
フラれてない……??
……あっ、そうか!!
てっきりフラれたのかと…
まぁ、でも、実際告白さえも断られてしまったわけだから、結ばれることはないだろう……。
「どうせ告っても、後はフラれるだけだしね~っ…」
弱音をはく私に、真菜はお母さんみたいに言った。
「何言ってんのよ!そしたら由花の恋は中途半端になっちゃうよ!?結果はどうでも、由花の気持ちが本物なら伝えなくちゃ」
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