隣の席のキミ
ふんわりと漂うコーヒーの香り。
職員室という場所はいつ入っても少し緊張する。
中山先生の机を探していると、そこにはもう藤田がいた。
「遅くてすいません!」
一言謝ると、先生は宿泊旅行についての説明を始めた。
「お前達二人には旅行のプリントを制作してもらうだけだ。そんなに大変じゃないだろ?」
先生は微笑した。
やったぁーっ!!
仕事少ない!
これなら別に苦じゃないかも…
「じゃあ山城さん1人でできんじゃん~?」
「……はっ!?なんで私1人なわけ!?」
「そうだぞ藤田。助け合ってこそ我がクラスの実行委員だ。」
そういって、先生は私をフォローしてれた。
そう、藤田はおだてれば調子にのるタイプ(笑)
だから結構扱いやすい。
「私、藤田だけが頼りだったのに~」
「……分かったよぉ!俺がやってやる!!」
………やっぱり。
藤田は昔から変わんないね…。
「さすが藤田だなぁー!」
先生も一緒におだてれば、効果倍増。
これで、なんとか、できそう……かな。
「じゃあ、さっそく今日の放課後から頼んだぞ。あ…もう一つ言うの忘れてた……旅行の場所は決まってるんだが…プランも立てといてくれ。」
今の言葉で予想以上の衝撃をくらった。
先生の嘘つきぃ――――――――っ!!
――――――――――――――そして、放課後。
私は今、藤田と教室で二人っきり。
「山城さん、10時から11時半まで潮干狩りでいい?」
いいって…私に聞かれても分かんないよ…まぁ、先生は自分達で決めろって言ったんだから、何だっていっか…。
「いいんじゃん?あ…お昼は11時40分から12時半でいいよね?」
「大丈夫じゃね?午後は、海で自由行動か…」
私達はなんとなくプランを立てていく。
まだ5月の半ばなのに旅行先が海なんて、かなりの選択ミスだよなぁ。
まぁそれは先生のせいだけど。
ふと、外を見ると、見覚えのある風景が広がっていた。
あの、きれいなグラデーションを残して大きく、大きく広がった夕焼け空。