隣の席のキミ



「……お願い。最初で、最後だから…」
もう、どうなったっていいと思った。
私がこんなことを言うのには、訳があるんだ、きっと。
でも、今はそんなの分からない。
ただ、口が勝手動くだけ。
「…藤田」
「………」
藤田は言葉を返してはくれなかった。
当たり前だよね。
彼女だって、いるのに。
「…山城さんは、それでいいの?」
……!?
藤田は、冷静でどこか遠い声を出した。
今の私は…
何を言われても、冷静に考えることができないだろう…
心の中は、そんなこと思ってないのに…。
「…うん、いいよ」
でも、実際、どうにもならなかった。
「…分かった。じゃあ、来て」
藤田は、窓のそばに私を呼んだ。
そこへ向かう、自分。
…藤田は、そっと私の髪を肩からよけるとそこに手を置いた。

そして、薄オレンジのライトが差し込む中、私達は唇を重ねた。
深く、
切なく、
愛おしいキスだった……。
気付いたときには、水滴が、頬をゆっくりと伝っていた。
キスが終わると、藤田は「俺、今日は帰んね」と言い残して教室から出て行った。

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