隣の席のキミ


音がした方を見ると、学校一恐れられているだけのことあって、恐い顔で私たちを睨む英語教師、島田先生がいた。
…きっと英語の授業中約一時間、廊下に正座だろうな…。
って思ったのに、説教だけですんだ。
この時は、完璧安心してた。
…でも、この世の中、そんなに甘くない、と気付かされたのは、すぐあとのこと。

「はい。では、次の文の日本語訳はどうなりましたか?藤田くん」
わ…藤田予習してないのに指されてる…。
どう誤魔化すんだろ…


「えっと…予習やってないです」

……え??
今、なんて…?
…………正直もの…!
偉い……けどやな予感…。


「は!?予習を忘れた!?」
案の定おこる島田先生。
「はい…すいません。…あ…あと、山城さんもですよ…?ね?」
ちょ!!「ね?」って言われても困る!
……忘れた…けど…。
「山城さんも!?」
驚く島田先生。
…やっぱりな…。
藤田のことだから言うと思ったぁー…。

…もう…なるようになれ…。

「…はい。ページを間違えてしまって…」
「山城さん、最近気がゆるんでるんじゃない!?授業まえの態度も含めて廊下に正座しなさい!授業が終わるまでよ!!」
「…はい…」
全く!
藤田のせいだ!!
ため息をもらしとぼとぼ廊下に歩く私…。
「藤田くんも正座にきまってるでしょ!!」
「え!?俺も!?」
「あたりまえでしょ!!」
…え…ちょっとまって…藤田も一緒に正座!?
無理だよっ!!
心臓持たないし!
……でも、正座…するしかないよね…。
これ以上島田先生を怒らせると、みんなに迷惑かけるしなぁ。
私が廊下に座ると、あとから藤田も微妙な距離を置いて座った。
…なんか…この距離寂しくなる。
私は藤田の「なに」でもないのに…私おかしいよね…。


「ねーねー山城さん」
私が下を向いていたら、小声で藤田が話しかけてきた。
「!!」
私は慌てて藤田の顔を見る。

…ヤバい…こんなに近くにいるなんて初めてだからどう喋っていいか分かんないよ…。
「島田先生怒りすぎじゃね?」
藤田は普通に話しかけてくれる。
それが嬉しくて、でもちょっと寂しい感じもする。

「だ、だよねー」
私はさりげなく目をそらした。
恥ずかしくて、藤田の顔見れないよ…。


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