隣の席のキミ
少しの沈黙の後、
「山城さんさ、泣きそうになってたよね(笑)」
突然意味不な話をふられ、一瞬戸惑ったけど、すぐに話を合わせた。
「え!?うそぉ!?」
「なってたよー」
「いや、なってないから!!」
「ぜってーなってたって」
「…藤田だって涙目になってたじゃん」
「うそぉ!?俺?」
「うん。」
「うわぁ~見られるとか最悪~。マジ恥ずい(笑)」
「はははっ。」
たわいもない会話…なんでこんなにも君と喋るのが楽しいんだろ…。
でも、どこか寂しいのはなんで…?
…それは、きっと藤田が私を“山城さん”って呼ぶからだ。
小学校からずっと一緒で、それほど親しくはなくて、私は君を藤田さんって呼んでた。
でも、中学校の3年間もずっと同じクラスで、私は中1の時から藤田って呼んでたんだ…。
私だけだよね。
藤田ともっと近づきたいって思ってるの…。
藤田はきっと私をなんとも思ってない。
ふと、中2の記憶がよみがえる。
あの時、私は藤田に聞いた。
『ねえ、なんで私だけに“さん”つけるの?』
そしたら藤田は私にこう、答えた。
『えーなんか、山城さんは“さん”つけないとヤダー』
その頃は、まだ藤田を好きじゃなかったから、そんなに傷つかなかった。
でも、今思い出すと胸が痛い…。
「なんかさー山城さん元気なくないー?」
!!!!
私は慌てて我に返った。
そっか、藤田は昔からそういうのに敏感だよね。
心の中はすごく優しいの、私は知ってる。
「別にそんなことないよ」
私は笑顔をつくった。
「ふーん。そお」
「…うん…」
ダメだ…
藤田は私になんの気持ちももってないってわかってる…。
でも…藤田の優しさに期待してしまう自分がいる…。
「…あ授業おわった」
「うそ?結構早かったね。時間経つの」
「えー?長かっただろ」
…そっか、そうだった…。
早いって思うのは私だけなんだ。
藤田は私と一緒にいる時間なんて、ドキドキもしないし、ワクワクもしないし退屈だよね…?
気持ちが顔に出てたのか、「山城さんやっぱ泣きそう」って藤田が私の顔をまじまじと見た。
私は藤田から顔をそらす。
「だ…大丈夫だって!!もとからこーゆー顔なの!!」
そう言って私は教室へ戻った。