隣の席のキミ
「…それは、知らない」
なんだかすごく、泣きたい気持ちになった。
でも、それと同時にホッとした自分がいた。
こんな自分が本当ムカつく。
本当意味わかんない。
さっきまでの前野への恋心はどこにいったのかと思ってしまうほど、私の頭と心の中には藤田しか浮かばない。
なんだ…全然忘れられてなんか、なかったんじゃん。
まだ、全然好きなんじゃん。
「友達でいたいだけ」なんて、“好き”を隠すための単なる言い訳で…。
前野に恋しようとか、こんなこと言っていた自分、本当はそんなの表面上だけだった…そんなに早く、新しい恋なんてできないこと分かっていたくせに―――…。
私は、まだ、藤田が好きだった…。
今も、ちゃんと好きなのに―――…。
それを無理やり誤魔化そうとして、辛い思いをさせてしまった私の心、ごめんね。
心は正直だから、きっと知っていただろう。
「話は、それだけ…?」
長い時間をおいて私は沈黙をやぶった。
「ん。そう。聞いて…良かったか?」
前野は優しく私に問った。
この優しさも好きだけど、私が好きなのは、藤田祐斗の優しさ…。
「…うん。良かったよぉ…ありがとね…」自然と涙が出てきていた。
「ん。頑張れよ!」
そう言って前野は私の頭を優しく撫でてくれた。