隣の席のキミ



俺は振り向かないまま、「あ。そえば、さっき原田が探してたけど」と思いつきの嘘を言った。
「あれ、さっき荷物置いてくるからって言ってたのになぁ…」
内心嘘がばれたと思ったけど、「ま、いーや。ありがと藤田!」と言って山城さんが部屋に戻ってしまったから、ホッとした。
罪悪感が少し残る。
あぁ、何やってんだろ俺…。
バカみてぇ。
きっと、今の嘘はそのうちバレて、山城さんを、また傷つけてしまうことになる。
それは、後になってから気付いたことだった。
後悔したって、遅い。


自分の気持ちに気付くなんて、簡単なようで難しい。
自分の中をバカみたいに探し回らなければ、それは一生気付くことはない。






< 58 / 110 >

この作品をシェア

pagetop