隣の席のキミ



すごく、儚かった。
今思い出すと、少し胸は痛む。
けど、あれはあれでいい思い出。
静かな雰囲気が、いまだに続く。
先に沈黙を破っていたのは俺だった。
「あのさ…」
この先、俺が何を言おうとしているのか、自分にも分からなかった。
でも、これ以上に気まずい空気になってしまう言葉を口にするのは間違いないだろう。
「…ん?何?」
その後、少しの沈黙が続いた。
すると、再び開く俺の口。
「…山城って拓也と付き合ってんだよな?」
俺が言った言葉。
確実に変だ。
俺には関係のないことを、こんな風にして聞き出している俺は最低。
「…はぁ!?…わ、私が前野とぉ!?」
ずいぶんと驚いている山城。
「そ。付き合ってんだろ?」
俺はまた、同じことを問う。
その答えがもし、「そうだよ」だったら、俺は間違いなく傷つく。
でも、「違うよ」と答えてくれることを、今はただ、願うしかない。
そして返ってきた山城の答え。
「そ、そんなわけないじゃん!!なんで私が前野なんかと…。しかも前野は真菜と付き合ってるんだから!!」
……
………っ。
情けないけど、今すごい安心した。
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