隣の席のキミ
そしてまた、沈黙。
図書室には、だんだんとオレンジ色の光が差し込んできた。
気まずい雰囲気になったから、私は再び作文を書き始める。
文章が、浮かんでこない。
さっきの事が、頭に焼き付いていて…。
そして、この沈黙を破ったのは藤田だった。
「山城…」
切ないようで、しっかりとした声が私を呼んだ。
同時に、熱くなっていく私の頬。
「…何?」
藤田はそのまま俯いて、そしてまた私に顔を向けた。
あう、瞳。
お互いの、心の中。
真剣な顔をする藤田に、目をあわせなきゃいけないような気がした。
だから私は、顔が赤くなっていようと、涙目になっていようと、そんなことは一切考えずにただ、君と目を合わせたんだ…。
それからしばらくして、藤田は口を開く。「俺は山城のことをフって、彼女を選んだ。でも、彼女より大事な人がいたから、彼女と別れた…」
「……うん」
私はそう答えるしかできなかった。
藤田が言う、藤田だけの“大事な人”…。その正体は誰だか分からないまま、藤田は話を続ける。
「こんな考え方、許されないのは分かってる…。でも、言うだけなら、許してもらえるか……?」
突然藤田に問われ、言葉の意味さえも分からない。
「藤田…、意味…分かんないよ?」