隣の席のキミ
俺の返事は、今にも消えそうな声で遮られ真剣なまなざしが向けられる。
「あのね…私、寂しかっただけなんだ…。藤田と付き合ってから、なんかあんまし喋れなくて…」
「…」
俺はただ、黙って山城の話を聞いていることにした。
ちゃんと、耳で聞き取って。
ちゃんと、心で頷いて。
「夏休みも、会えなかったし…メールも嬉しかったけど、声聞きたくて…でも、実際藤田に話かけられなくて…あんなことして、ごめんなさい…」
山城は、寂しかったんだって。
声、聞きたかったんだって。
メールだけじゃ、物足りなかったんだって。
俺としばらく話してなかったから、さっきみたいなことしたんだって。
…俺も、同じ気持ち。
山城に近付けば近付くほど、自分がコントロールできなくなってしまうような気がして、しばらくの間距離を置いていた。
でも、本当は誰よりも触れたくて、誰にも渡したくなくて。
“俺だけのモノ”にしたかった。
さっきみたいなことしたのは、俺もそう思っていたから。
山城の目からポロリとこぼれる涙。
それを指で軽く拭って俺は言った。
「何泣いてんの(笑)…てかさっきのは作戦だから」
「……へ?」
意味が分かっていないのか、潤んだ目でこっちを見上げる山城。
本当、無防備な奴。
好きな奴にそんな顔されたら、男は誰だってキスしたくなる。