last message~50~
小さくなってしまった健さんは、私の手のひらの中で、サラサラと風に吹かれてゆれています。

私の手のひらの中から、少しずつ少しずつ健さんが去って行く。

それが悲しくて苦しくて。

涙がこぼれました。泣くことが我慢できなかった。

声を出して一人泣きました。

荒れた海の波の音で私の声はかき消されていきました。

気がつくとぎゅっと手を握り締めていました。

そっと手を開くと、ひとかけらだけ健さんがのこっていました。

私の涙がしみこんだ健さん。

ずっと一緒にいたい。

その、ひとかけらを食べちゃいました。

砂をかむようなジャリジャリとした感じ。

味も何もしないものなんですね。

冗談で、健さんを食べちゃうぞって何度も生前言ったこと覚えてますか?

カニバリズムだとか、そういう類のものではないんですが。

私の血肉となって一緒に生き続けていてほしいのです。

次生まれてくるときは、健さんの体の一部でいい。

生まれるときも、死ぬときも、一緒だから。

健さんがいないこの世界は、あまりにも暗すぎて、私はつい前へ進む足を止めてしまいそうになる。

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