薄紅空
露のその言葉に、皆が大笑いする。
そして、口々に恋の話で盛り上がりながら、村へ戻る。
「一体どうして、会ったこともない御方をお慕いししているのよ。」
「お話をきくだけで、素敵な御方だとすぐに分かるわ。
まるで姉上様の雅姫(つねひめ)様とは太陽と月のよう。
聡明で、思慮深く、慈悲に富んだ御方なのでしょう。
女として、憧れないのも無理ないじゃない。」
露の言葉に、皆があきれたようにため息をつく。
しかし、露とて本気で帝の子息に恋しているわけではない。
ただ、どういう訳か、祭りのたびに年上の男共から、
それはもう執拗に迫られ、しかもひとりではないのだ。
そういう面倒を避けるためにも、こんな噂を流しておいた方が賢明かもしれなかった。
「今年の祭り、いよいよ私たちの同じ年の若衆組も出てくるもの。露も協力しなさいよね。」
その言葉に、露は頷いた。