薄紅空






「ただいま~」



洗濯物を庭に干して、引き戸を開ける。




「おお。ちょうど良かった、露。手伝っておくれ。」



そう言って、窯の方から顔を出すのは、露の育ての母である奈津。



村のはずれに捨てられていた孤児の露を引き取り、育ててくれている面倒見のいい女性。



夫と息子を亡くし、女手一つで露をここまで育ててくれた。



「あんたもいつまでもここに居座ってないで、さっさと結婚して一人前になっておくれよ。」



窯に向かいながら、奈津が言う。



「母さん、そんなにあたしに出て行って欲しいの?」



「あたしだってもう若くないんだからね。」



露は、鍋を洗いながら奈津の言葉を受ける。


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