薄紅空
※
「ただいま~」
洗濯物を庭に干して、引き戸を開ける。
「おお。ちょうど良かった、露。手伝っておくれ。」
そう言って、窯の方から顔を出すのは、露の育ての母である奈津。
村のはずれに捨てられていた孤児の露を引き取り、育ててくれている面倒見のいい女性。
夫と息子を亡くし、女手一つで露をここまで育ててくれた。
「あんたもいつまでもここに居座ってないで、さっさと結婚して一人前になっておくれよ。」
窯に向かいながら、奈津が言う。
「母さん、そんなにあたしに出て行って欲しいの?」
「あたしだってもう若くないんだからね。」
露は、鍋を洗いながら奈津の言葉を受ける。