天神学園高等部の奇怪な面々ⅩⅠ
もうすぐ夜が来る。

そんな薄闇の校舎をバックに、アモルの禍々しい瞳は一際恐怖を増幅させる。

「ななな、何だこの女、気持ち悪ィ目ぇしやがってっ…」

「び、びびんな!只の女だよ!スタンガンで痺れさせちまや何も出来やしねぇ!」

うろたえつつも、その恐れを必死に隠すように。

男子生徒達は一斉にアモルを取り囲む。

「ケケケ、雑魚が囀りやがる…アモルを捕まえて『只の女』とか抜かしやがった」

ふと、声がした。

アモルの可憐な桜の花びらのような唇は微動だにしない。

ならばその声は彼女の声ではない。

何より男の声だった。

まさか彼らは想像すらしないだろう。

アモルが抱いたくまのぬいぐるみ、エリザベスが喋ったなどと。

「只の女ねぇ…」

三日月にも似た口端を、ニィッ…とつり上げながら。

「Die Person der Dunkelheit, ich gehe die Dunkelheit von einem Schatten, Dunkelheit von einem Schatten, ab(影から影、闇から闇、我は暗がりを歩む者)」

其の少女は、死を具現化する言の葉を紡いだ。

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