ハニードット
授業が終わり、HRだった。

「美樹~。資料室まで着いて来てー?」

少し不安そうな智美。
笑いながら私は良いよ、
って言いながら
彼女の隣を歩く。
いつもの廊下より、断然
ピンク色は増していて…
“みんな、幸せなんだぁ”ってつい、
悲愴感に陥ってしまう。

「…樹…?…美樹ってば!!」

ハッと我に変えれば、目の前に
智美が居た。
智美は少し頬を膨らましていた。

「…あ、ごめん。で、どうしたの?」

「いやぁ…その…」

智美の目線の先を見つめてみる。
そこには…

「龍!!」

放課後になって登校した龍だった。
龍は怠そうにしていた。

「あ、美樹。おはよー…と、隣の友達もおはよー」

智美は案の定、目を丸くしていた。
“ヤンキー”っぽい、というよりも
今の龍の姿はまるで“犬”みたいだった。

「え、何時に起きたの?龍ってば」

ふふっと少し吹き出せば手話をした。
龍から見て右手には『4』と記し、
両手で『時』を記した。
それを見て、智美は
また目を丸くした。

「あっ…美樹、私…資料室一人で行くよ!邪魔しちゃ悪いし…」

そう言って、残りの資料室までの
道のりを走る智美の後ろ姿を、
私と龍は見つめた。

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