Black Peace
大きなダンボールを抱えているその女子はヨタヨタとこちらに歩いてきた。
段ボールがうまい具合に女子の顔を隠していてうまく見えないが、赤いサラっとしたロングヘアーが特徴的な女子生徒だった。

変な奴だと思いつつも、俺は無視して廊下の真ん中を歩き続けた。

すると、同じく廊下の真ん中をヨタヨタ歩いていた例の女子と道が重なり、
「………」
「………」

お互い足を止めた。


正直驚いた。
ここの生徒はみなビビって俺に道をあけてたのに、こいつはよける気配すらない。

俺も自分から人に道をあけたことは一度もないもんだから、どうしましょうね。
俺がどうしたものかと困っていると、その女子はダンボールのよこからヒョコッと顔を出し、満面の笑みで言ってきた。



「あんた、邪魔だからどいてくれる?」

「は……?」

女子の思わぬ発言に顔をしかめる。

今この子なんて言った?先ほどのセリフに戸惑っていると、その女子はジロッと俺を睨むと、


「だから、邪魔だって言ってんの。さっさと道開けてくれるかな?」

メキメキッ

額あたりの血管が浮き出る音が聞こえた。
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