Black Peace
そろそろ坂も終わりが見えてきたところで、俺はポケットから先ほど自販機で買った紙パックのジュースを取り出した。
昔からなぜかマスカットジュースが大好きなんだよな。
すると、隣で歩いてる千秋が小さめな声で話しかけてきた。
「でも、私のクラスに、どうしても馴染めないというか…、孤立しちゃってる女の子かいるのよね……」
「まぁ…中にはそういう奴もいるだろうな。」
俺はパックにストローを差し込みながら千秋に答えた。
千秋は俺の言葉を聞いて少しうつむき、
「うん…そうなんだけど、なんか放っておけないというか、本人は放っておいてって強く言ってるんだけど、やっぱり気になるの。」
「ふ〜ん……」
マスカットジュースを飲みながら鼻声で生返事を返す。
放っておけない、ねぇ……
そいつがどういう奴なのかはクラスが違うから分からないが、なにやら訳ありの奴みたいだな。
自分から孤立しようとするなんて、まるで大野みたいなや−−−−
「その子、大野飛鳥っていうんだけど…」
「ブーーーーッ!!」
まるでポンプが逆流したかのように、口の中に蓄えたマスカットジュースを勢いよく吹き出した。
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